技術職を目指す大学生が学ばなければならない 技術者倫理 その1
技術者の関与する企業不祥事がなくならない
雪印乳業の集団食中毒事件(2000年)、
A建築士による耐震強度偽証事件(2005年)、
耐震ゴム偽装事件(2015年)、
マンション杭打ちデータ偽装事件(2015年)、
日産自動車完成検査不正事件(2019年)など技術者が関与する企業不祥事はなくならない。
それぞれの事件の後、法令改正や再発防止策が整えらてきたにもかかわらず。
お話のペルソナは?
これから社会に巣立ち技術者となることを目指す大学生に向けて、「なぜ大学で技術者倫理を学ばなければならないか?」について一緒に考えてみましょう。
技術者を目指す若者たちの意識を変えることから技術者の関与する不祥事の減少を目指したいと考えています。
倫理とは何かを考えてみる
まず、「倫理」とは何か?
倫理学は哲学の中の一つの研究分野で、古代ローマのソクラテス・プラトンの時代から綿々と研究されてきた学問のテーマです。
平たく言えば、人の道徳や社会規範を考える学問です。
倫理とは?言葉を分解すると「倫」は「人の輪=仲間」、「理」は「理屈、決まり事」と言った意味になります。
私はこう解釈します。
倫理とは?「人が社会に必要とされる存在になるための行動規範」です。
倫理に似た言葉として「社会規範」と「道徳」と「法」があります。
「社会規範」は社会生活を営む上の守らなければならない規範全般。
「道徳」は個人の生活倫理、人を殺さないとか、人のものを盗まないと言った生活する上で人としての基本規範です。
一方、「法」は現体制の社会秩序を守るため国家が定める強制的規範で、最低限守らなければならないもので、かつ罰則をもって人の行動を制します。
そして、「倫理」は社会規範として「法」に似ていますが、強制ではなく自律的な規範であり、それを守る守らないを含み個人の判断を優先させる人間的な概念です。
現代の社会環境における倫理観
倫理の観点で現代の社会環境を見てみましょう。
I T技術の発達で、P Cだけではなくスマホや家電など身の回りにある全てのものがインターネットに繋がり、街中でも職場でも小さなカメラが設置され、全てが記録される時代になりつつあります。
5Gの高速通信網のインフラ整備により、いよいよIoT社会の到来です。
まさしく「お天道様は見ている」環境です。
過失であれ悪意を持った行動であれすべての行動は記録されていると思わなければなりません。
隠し事はできなくなり、倫理に外れる行動は必ず発覚します。
自ずと技術者は倫理観を持って襟を正した行動をせざるを得ません。
本日はここまで、次回は倫理の特徴である階層の話、技術者が技術者倫理を身につけなければならない理由について