技術者倫理の基礎知識 14 〜技術者倫理に沿った行動を取るためにはどうするか?実践編2〜

前回は具体的事例を基に倫理問題に対峙した時、技術者倫理に沿った解決を図るためにはどうしたらいいか。

その考えたを線引き問題の解決方法をベースに解説しました。

今回は実際の事件で技術担当者はどういう行動をとって、その結果どうなった解説します。

そして、最後に倫理問題に対して技術者はどう行動すべきか?考えていきます。

実際の事件で技術担当者Aはどう判断して、その結果どうなったか?

当事者のAは、事勿れ主義・自己保身のため、①又は②の選択肢を選び、

技術者倫理に従わず、計測データを改ざんして、欠陥のある杭を放置した。

10年間は問題が起こらなかったが、経年で沈下が進み、体感で傾きがわかる事態へ。

不正が表沙汰に発展。

良かれと思って忖度した結果、会社へは莫大な損害を与え、かつ社会的信頼を失わせる結末となった。

あなたが技術担当者Aの立場だったらどうする?

技術者倫理を学んだ技術者であれば、技術者倫理を最優先に行動できます。

この場合、土木技術者倫理規程に則れば次の2つの規定に従うべきです。

・土木技術者としての「使命と役割」に忠実な行動をとる。(公衆の安全確保)

・情報の開示

具体的には次に示す行動が考えられます。

1 安全性の確保に関する自分の考えの正当性を確認するため、同僚や上司に相談する。同僚や上司の意見も踏まえ、技術的根拠に基づき自分の考えを書面にまとめる。

2  工事を監督員の指示通りに行えば杭の支持力確保に問題があることを発注者側に知らせる。この時、得られた情報を添付して文章で提出する。設計変更を検討してもらうため、現地のボーリング調査の追加を早急に実施すべきであることを、発注者に理解してもらう。

3 発注者に問題点を説明するだけでなく、社内の関係部署にも情報を開示し、協力を要請する。

技術者と経営者の立場の違いに関する考察

企業組織のなかで「技術者倫理」の問題に遭遇する際、

ひとつの解決法として、

経営者が判断することと技術者が判断することを区分して提示する。

両者が同じテーブルで検討する。

そして、会社としてどれを優先するか?最終判断を社長(トップ)が下す方法があります。

この講座の最後に

これで、技術者倫理の基礎知識の講座は終わりになります。

最後に、この講座の目的を再確認して終わりにします。

目的1 技術者の卵の皆さんに一定の倫理規程を学んでもらう

目的2 皆さんが本来持っているはずの良心や責任感を喚起し、強化する

目的3 倫理的ジレンマの生ずる事例をもとに、そのジレンマを解決する問題解決能力を身につけてもらう

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