技術者倫理の基礎知識 11 〜公益通報者保護法について学ぶ ②〜

今回は公益通報者保護法の法制化以降の推移、

どのような効果が上がったか?

2020年の同法改正に至った経緯について学んでいきましょう。

公益通報者保護法の制定 2006年

企業内において、公益・環境・安全を脅かすような不正行為を知った個人が、

外部へ通報し、不正を明らかにしようと「内部告発」をすると、

通報者は失職したり、収入源を絶たれたりするなど大きな損失を受けることが多く、個人に多大な犠牲が発生します。

そのような背景から、内部告発の中でも公益につながる通報を行なった労働者の雇用を守る目的で

2006年に公益通報保者護法が制定されました。

公益通報の定義

公益通報者保護法は法律ですから、いい悪いの判断基準は明確でなければなりません。

そこで言葉の定義が重要になってきます。

まず、公益通報とは何か?

公益(公共の利益)に反する行為を取り締まるために、

刑法、食品衛生法、廃棄物処理法など、公衆の生命や身体、財産の保護にかかわる法令があります。これらの法令に違反する行為などがあった場合の通報が公益通報です。

これらの法令に違反する行為などがあった場合、その違反内容を内外部へ通報する行為が公益通報です。

そして、通報先には次の3つが定義されています。

① 企業内で定められた所定部署への「内部通報」・・・これが原則です

② 監督官庁などの行政機関への通報

③ マスメディアなどへの通報・・・例外的(証拠隠滅の恐れがある、会社からの脅しがある場合)

公益通報者保護法の効果

この法律が施行されてからは、公益通報者への解雇は無効になりました。

また、企業の経営者は適法な公益通報者に対して、降格・減給などの不利益な取り扱いもできなくなりました。

同時に、適法の公益通報があった際は速やかに事実を調査し、

通報された対象事実を中止や是正するための措置も必要となりました。

ただし、この保護法で救済されるのは、労働者と派遣労働者に限られています。

公益通報者保護法の改正 2020年

公益通報者保護法は施行から14年を経て徐々に浸透してきました。

改正前は事業者の労働者に対する行為の制限が中心の法律でしたが、

2020年に改正(2022年の施行予定)され、

公益通報者を保護する上で事業者が積極的に関与すべく、罰則付きで強化されるようになります。

改正によって、事業者自らが不正を是正しやすくするとともに、

通報者が安心して通報を行いやすく、また保護されやすいものとなることを目指しています。

改正のポイントは次の6つです。

① 内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備義務

体制整備に関わる次の2つが義務化されます。

・公益通報対応業務従事者(通報窓口業務から是正処置を担当する者)を定める義務

・公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとる義務

ただし、中小企業(従業員が300人以下)については努力義務にとどまります

② 内部調査に従事する者の情報の守秘義務

組織内へ整備が義務付けられた公益通報対応業務従事者に守秘義務を求める。

通報者を特定させる情報の守秘義務を課し、通報者に不利益が及ばないようにしました。

③行政機関等への通報の要件緩和

外部機関(行政機関・報道機関)への通報要件を緩和することにしました。

行政機関においても公益通報に対応するための体制を整備することを定めることとしました。

④保護される通報者の範囲を拡大

従業員に加えて役員と退職者(退職後1年以内)を追加しました。

⑤保護される通報の範囲を拡大

刑事罰犯罪に加え行政罰犯罪を追加しました。

⑥保護の内容を拡大

解雇無効に加え損害賠償責任の免除を追加しました。

改正前、通報された企業側は通報によって受けた損害(不買運動などによる売上の喪失など)に対し

損害賠償請求をできましたが、免除されることになりました。

改正によって期待される効果

①企業は形ばかり相談窓口を設置したり規程を整備したりするだけではなく、

リスクマネジメントの観点からに実効性のある内部通報体制を構築することが求められることになります。

②内部通報体制について社内の啓蒙活動が重要視される。

③公益通報対応業務従事者は罰則適用のリスクに晒される。そのため、従業員ではなく、外部専門家(弁護士等)の関与が増える。

④内部通報制度認証が制定されると、コンプライアンス重視企業が認知度アップのため認証企業が増える。不祥事の発生防止に役立つ。

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