技術者倫理の基礎知識 1 〜超情報化社会における倫理〜
今回の倫理ブログシリーズは、理科系大学生に向けて
実務経験を持つ技術士として
技術者倫理について解説していきます。
1.そもそも「倫理とは何か?」を考える
一言で言えば、人の「道徳」や「社会規範」を考える学問です。
倫理を探究する倫理学は哲学の中の一つの研究分野で、
古代ローマのソクラテス・プラトンの時代から
綿々と研究されてきた学問のテーマです。
また、日本語の「倫理」という言葉からその意味を解釈すると、
「倫」は「人の輪=仲間」、「理」は「理屈=決まり事」と言った意味になります。
最近の現代用語にも登場します。
「エシカル」とか「エシカル消費」といった言葉、聞いたことありませんか?
元々、エシカル(Ethical)は「倫理」の英訳です。
現代用語で使われている意味は、
「倫理的」→「環境保全や社会貢献」といった使われ方をしています。
実務者として経験から、私なりの解釈で「倫理」とは?
「人が社会に必要とされる存在になるための行動規範」です。
もう少し深掘りします。
「倫理」に似た言葉として「道徳」と「法」があります。
それらの関係性を下図に示します。
「道徳」は個人の生活倫理、人を殺さないとか、人のものを盗まないと言った
生活する上で人としての基本規範です。
一方、「法」は現体制の社会秩序を守るため国家が定める強制的規範で、
最低限守らなければならないもので、かつ罰則をもって人の行動を制します。
そして、「倫理」は社会規範として「法」に似ていますが、
強制ではなく自律的な規範であり、それを守る守らないを含み
個人の判断を優先させる人間的な概念です。
2.超情報化社会における倫理 (全てが記録される社会)
コロナ禍の渦中において、アフターコロナに向け
対人非接触化を進めるため
情報のデジタル化・IT化の進展がどんどん進んでいます。
この環境変化を倫理の観点で見ると、
I T技術の発達で、P Cだけではなくスマホや家電など身の回りにある全てのものがインターネットに繋がり、
街中でも職場でもカメラが設置され、全てが記録される時代になりつつあります。
まさしく「お天道様は見ている」環境です。
集めた情報をどう使うか?プライバシー保護は?といった問題は議論が必要ですが
確実に記録されつつあるということは現実です。
明らかにしようと思ば、個人の行動は、
過失であれ悪意を持った行動であれ、隠し事はできなくなり、
倫理に外れる行動も記録されて必ず発覚すると考えるべきです。