ISO9000は、何のために取得するか? (1)
ISO認証を取りたい
いきなり、ISO9000認証を取得したいと言う経営者がいますが、
まず、取得する目的を明確にしておきましょう。
経営者として従業員に対して「何のために、何を目的にした取り組みか?」を示すことが一番重要です。
認証取得のため、そして認証を維持するために、それなりのコストがかかります。
無駄な投資にならないように、
「こんなはずじゃなかった」と思う前に、経営者としてよく考えておきましょう。
そもそもISOとは?
最初に、そもそもISOとは?について、解説します。
ISOとは国際標準を制定する機関、またはその規格そのものを意味します。
全ての産業分野の国際標準化・規格化を行う機関です。
似た言葉でJIS規格(旧日本工業規格)があります。
今は呼称が変わって「日本産業規格」と呼ぶことになりましたが、
この産業規格の国際版がISOです。
世界のグローバル化に伴って、全ての物に世界共通の規格が必要になった背景があります。
安くて良いものを世界中から選んでこなければ、競争に勝てない時代になりました。
そして、ISO9000番は「品質マネジメントシステム規格」になります。
また、分かるようで分からない言葉が出てきましたが、
マネジメントとは「組織管理」といった意味です。
ですから、「品質マネジメントシステム」とは、「品質確保のために組織を管理する仕組み」と言う意味になります。
要求される品質を確保するためには、こういう作り方をすれば、受入検査をしなくても、品質が守れる。
工業製品のレシピ(調理方法)集といったイメージです。
他の規格と違うところは「任意規格」であること。組織毎の自主性を重視した任意のルールであります。
それぞれの工場、企業、製品毎に生産手法を明文化して、そのとうり作れば、誰が作っても、求められる品質のものを作れると言うことです。
したがって、海外との取引では、ISO認証を持っていることが入札条件になることがあります。
審査登録制度
取引上で、物の品質を検査に替えて保証する仕組みですから、第3者(売る人、買う人と関係ない人)の審査と認証登録が必要になります。
認証を維持するためには、定期的に、内部における監査と、第3者による審査が必要となります。
この認証のためには、決められた仕組みどうりに作っていますと言うことを証明する生産過程毎の書類を準備して審査をうける時間と労力、そして審査費用がかかります。
このためにかかる費用と、それによって得られる効果が見合っていれば良いのですが、
こんなはずじゃなかったと言う経営者も多く、認証は取ったが、維持はやめたと言うケースをよく聞きます。
ISO9000取得企業によくある批判
① ISOを取得したが、取得前の大騒ぎは一体何だったのか? 単なる書類だけが残った。
②品質向上と品質管理システムは無関係である。ISOを取得しても品質は良くならない。ISOは品質改善とはなんら関係がない。
③「ISO 取得で審査員のいうことを聞いていたら、やたら要らない書類が増えた。
かえって書類や注意点のおもりに手間がかかる。
品質に関係ない部署まで範囲に入れたことは失敗だった。
範囲を絞れば費用も機関も少なく済んだのに残念だ」という不満。
④ ISOを取得しても売上が上昇するわけではない。
自己満足に終わっている。
トップが何の為にISOを取得したのか? と担当者を責める状態で困っている。
第一、余計な部署をつくったため、費用負担も大変だ。できることなら上手い辞め方を誰かに指導してほしい。
⑤「ISOは書類の整備を前提としている。
このことは紙の原料である木材、その供給地ジャングルの木の伐採を助長するようなものであり、
地球環境破壊を行う悪いシステムである」……といったように。
この対策のためにISO14,001 という環境監査システムの具体化を急いだ! という方もおられます。
こうなると、仕事が仕事を作る悪循環のスパイラルに陥ります。
アフターコロナ(コロナで一変する経営環境)で生き抜くには、経営者としてよく考えて、決断しなければならない問題です。
ISO認証・登録の取得によるメリット
もちろん、悪いことばかりではありません。良いことも多いのです。
外に向けたメリットとして、
①公共工事や海外顧客向け入札参加条件の確保
②企業の信用アップ
②競合他社との差別化
内に向けたメリット
①業務の標準化による生産性向上
②意識改革による職場の活性化
③経営管理力(マネジメント力)の強化
ポイントは、
ISO取得への取り組みは「10年後の経営基盤強化に向けた格好の組織改革ツール」になると言うこと。
一長一短に叶いませんが、将来像を見据えて、一歩ずつゴールに近づく努力が大切です。
ISO認証取得のため準備すること
将来のISO認証取得を視野に準備することは、
品質マネジメントシステムを理解して、自社の将来の姿にあった形で構築することです。
認証をとる取らないは別に、これを構築すれば、
会社は、確実に良い方向へ変わってきます。
そのため、次で品質マネジメントシステムの基本を解説します。
品質マネジメントシステムの基本
品質マネジメントシステムとは「品質を作り上げるための、一連の仕組み」です。
当然その仕組みの中には「生産管理」も「品質管理」も入ってきます。
どういうものかは、次の5つの原則を理解することからはじます。
原則1:顧客重視(顧客の要求こそが品質です)
原則2:結果よりプロセスを重視
原則3:全員参加(経営者、管理者、従業員)
原則4:継続的改善(計画P→実行D→結果の評価C→改善A→次の計画P→・・・・・・・・)
原則5:「見えるか」の徹底(事実とデーターで仕組みを回す=データードリブン)
原則5を補足すると、車の運転と一緒です。
目を開けて外の状況を確認しながら、車にの状態をメーター機器で認識して、ハンドル・アクセル・ブレーキを操作する。
目をつぶったまま、過去の成功ルールを盲目的に信用して企業運営したのでは、これからの会社は継続できません。
中小企業はどうしたらいいか?
とは言っても、品質マネジメントに取り組むことは、
多くの中小企業にとって、相当にハードルが高いと思われます。
まずは、生産現場の基礎体力をつけることを優先すべきです。
中小企業の経営者の皆様、まず第一歩は、5S活動によって、効率的に改善が出来る生産現場づくりから始めましょう。
次回は、なぜ5S活動から始めなければならないか、
解説していきます。