R3年度 1級建築施工管理技士 一次検定を終えて

新制度へ移行後、最初の一次検定

先日(6月30日)に1級建築施工管理技士の一次検定が行われました。

「技士補」という資格を創設して、建設業への新規入職促進を目指す新制度へ、

移行後最初の検定として注目を浴びました。

試験前は、「旧制度に比べ大きく難易度を変えることはない!」

むしろ、「奇抜や引っかけ問題は減り、オーソドックスな試験になる」と予想していましたが、

結果は、次の通りでした。

新旧制度の大きな違いは、

①応用能力検定として5肢2択問題が出題された。かつ、その内容は「躯体」「仕上」の問題として共通問題化(6問共通)

②午前の『躯体」「仕上」の選択問題は、選択の幅が狭まり、問題数も拡大

③施工管理法についての出題が半減(20問→10問)、施工管理法を軽視

この変更内容から、国交省の考え方を推測することができます。

「総合建設業」重視、「施工管理法」軽視

違い①について、資格付与の条件として、応用能力を試す設問が新設された。

設問形式は5肢2択形式の設問になることは事前に示唆されていた。

しかし、内容については、施工管理法と予想していたが、

ふたを開けみたら「躯体」「仕上」の内容だった。

施工管理に必要な応用能力は施工管理法の取得ではないのか?なんだか矛盾を感じる。

また、2択の両方とも正解でないと得点にならない。

これにより、かなり難易度が上がりました。

いかに難しくなったか、数値で示します。

設問に対して理解度がゼロとして、サイコロを投げて解答しようとすると

旧制度では、25%(1/4)の確率で正解。

新制度では、5%(1/5✖️1/4)の確率で正解。

実質は5倍難しい設問になりました。

違い②について、専門性によって得意・不得意のある「躯体」「仕上」は、

現職種の関連問題を中心に解答してよかった旧制度から

建築一式工事を施工管理する能力として、

「専門に関係なく全般的に知識を得ていること」が要求とされたということ。

このことは、専門工事業よりは総合建設業(いわゆるゼネコン)重視の制度を目指している。

違い③について、一次検定では「施工管理法」を軽視する。

施工管理法の知識については、5年間の実務経験の中で獲得した後、2次検定で試す。

全体の評価としては、一次検定は「難しくなった」、「専門工事業の受験者にとってハードルが上がった」と評価できます。

この検定方法で、建設業への入職者を増やせるのか?

この検定方法で、本当に国交省の課題が解決できるのか?

前提として、合格ラインは旧制度と同じ60%解答とします。

新制度により、正解率の下がる「5肢2択共通問題」が全体の10%占めることにより、

今回の検定の合格率は確実に下がることが予想されます。

入り口のハードルが上がったことで、

入職者増加の目論みとは逆方向に動くのではないかと心配します。

制度改革の目的を再度確認しておきます。

国交省の課題は、「将来の技術者大量退職時代に備え、入職促進の取り組みが不可欠」でした。

このために、実務経験がなくても知識だけで資格を得ることだできる、

学生または、他職業からの転職組をターゲットにした改革とも見えます。

「技士補」資格を持って入職して、「実績を積むことにより上の資格へステップアップできる」を狙った制度改革のようです。

本当の課題解決に向けて

入職者は増えるが、建設業全体としてそれだけでいいのか?

見方を変えて、建設業の大半を担う「専門工事業」で働く無資格の若者にとってはどうか?

現場で培った実績やノウハウを試験で生かすことができず、

将来を見限って離職する恐れはないのか?

2次検定で、その辺りが報われるのであればいいのですが、

2次検定も総合建設業重視の試験では業界全体としては逆効果になるでしょう。

専門工事業者として活躍する場を提供することが、課題解決のために重要と考えます。

したがって、現在専門工事業で頑張る無資格の若者の離職を防ぐ対策も必要なのでは?

提案したいのは、技士補のハードルを下げる。とにかく資格者を増やす。

ある程度の知識があると認めれば、技士補を付与する。

補助者としての資格者が多くて困ることはないでしょう。

技士補として経験を積んだ後、2次検定の経験記述で、現場を運営する能力を試す。

国交省の皆様、ご検討をお願いします。

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