本との出会い 1 持続可能社会と地域創生のための建築基本法制定
「建築」で生計を立てている身として、この手の本は業務の延長として、定期的に手に取るようしている。
最近、業務の一環として技術者倫理について考える機会があり、
調べてみると、このところ建設業界の不祥事がやけに多い。
行政や法体系に原因があるのでは?と考えるようになり、
建築関連の法体系について考えようとして、手にとった一冊です。
どういう本なのか?
発端は2003年。建築の専門家有志が立ち上げた「建築基本法制定準備会」です。
彼らの主張は、
70年前に制定された建築に関する法律「建築基準法」では、
このところの社会状況に変化についていけない。
制度疲労を起こしている。→いろいろな問題が多発している。と言った図式に見える。
例えば、貧相な「まちなみ」の増殖。行政の機能不全による建築紛争の多発。建築業全体へのさまざまな疑念。建築専門家への不信感。
わが国の社会状況の変化とは、人口増加のピークがすぎ、人口減少が進む現実の中、
従来の経済成長社会から、人口減少を踏まえた持続可能な社会への変化に、どう対応するか、
建築物の量は十分確保できた、これからは質が問われる時代へ。
建築物だけではなく、その集合体としての「まちなみ」も対象にして、
「建築物」と「まちなみ」のあるべき姿を基本法に明文化する必要がある。
そこで、建築行政の理念や基本方針を定める基本法を定めて、新しい時代に合った法体系を整備していこうとする活動が興ったわけです。
どこが面白いか?
この本、建築専門家向けで、それ以外の人には響くところが少ないかもしれない。
しかし、このところのコロナ騒動の最中、「ポスト旧時代」として、生活スタイルを更新することが現実味を帯びてきている。
建築行政もしかり、見直すための、いいタイミングなのかもしれない。
見直し方は、平成に入ってから立法の新しいスタイルを採用する。
従来の行政主導の政府立法ではなく、議員立法として国民側からの発議による、
大綱や理念を中心とした基本法を整備する。
その基本法は、憲法と個別法を繋ぐ位置付けにする。
例えば、原子力基本法、災害対策基本法、環境基本法など。
建築について言えば、従来の法体系は下図のようになっているが、
憲法と建築基準法の間を繋ぎ、憲法の補完的役割を建築基本法に託す。
私はこう解釈した
この本の副題にあるように、建築物を「持続可能社会」と「地域創生」の観点で見直している点がポイント。
そして世界共通の目標でもあるSDGs(国連の掲げる世界共通の17の開発目標)とも親和する。
編者の考える建築基本法は、SDGsにおける次の4つのゴールとも一致する。
目標3 全てに人に健康と福祉を
目標6 安全な水とトイレを世界中に
目標11 住み続けられるまちづくりを
目標12 つくる責任、つかう責任
読み終わって何が残った?
建築の専門家としては、将来の建築のあり方をどうすべきか、真剣に考えなければならない問題だと思う。
資本社会において、建築物は私有財産であるだけではなく、社会資産であるべきとの主張にはうなずける。
アフターコロナとして、いろいろなことがダイナミックに動き出す予感がします。